おやすみなさい








 

トン トン



曹操の執務室の戸が静かに叩かれた。ほとんどの者は深い眠りの底にいる時刻。

そんな時間に誰が何のようなのだ。と、曹操は返事すら面倒そうに、返事をした。

「殿、夜分に失礼いたします」

中へ入ってきたのは、曹操が信頼してやまない、軍師の荀ケと荀攸であった。

「めずらしいな、二人で来るとは・・・」

「そうですか?」

荀ケが笑みを浮かべていった。その隣で荀攸もニコニコとしている。

「実はお願いがございまして。」

荀攸が申し訳なさそうに曹操に告げた。

「お願い?」

曹操は一瞬、嫌な予感を覚えたが、気のせいだろうと思いとどまった。

荀攸は曹操の返事を聞かないまま、すばやく主の手首に紐を巻き、寝台の端にくくりつけた。


「で、これは何のまねだ、公達?」

その見事な手さばきに感心した曹操は怒る気さえなくなり、逆に冷静になった。

荀ケと荀攸に見下ろされながら、曹操はニコニコとしている二人の顔を交互に見る。


「いえ、急に殿を抱きたくなりましたので来た次第です。」

荀攸はさらりと言った。

「なら、はじめからそういえばいい」

曹操は自由を奪われながらも、反撃している。

「いつものように抱いたのであれば、面白くないでしょう。先日、館の蔵を掃除した際に、こんなものを見つけたのです」

荀攸は懐からガサゴソと一冊の古びた本を取り出した。

そこに書かれているタイトルはなんとっ!

『閨房術 これで貴方も夜の王!』

「・・・よく、そんな本があったものだな」


半分あきれ返る曹操に荀攸は全然、気にせずに、曹操の寝間着をめくり、肌を露出させた。


ひんやりとした空気が曹操の肌をじかに伝わる。

そこへ、荀攸の指が触れる。人並みの体温が心地いい。


ゆるり、ゆるりと指を滑らすように、首から、下へと肌をなぞっていく。

相変わらずの指の巧な使い方に曹操は舌をまいた。


「ぁ・・・」

と、曹操の口元から自然と声が出る。

「殿、感じてきましたか」

荀攸は背後にいる荀ケに視線を送った。

その合図で荀ケは曹操のそばに歩み寄り、縛っている手首を乱暴につかんだ。


「殿、今日は寝かせませんよ」

ギリッと紐が手首に食い込み、曹操がうめき声を上げた。

普段は温厚な二人が曹操を抱くときだけ豹変するのだ。


巧みな指使いと攻めはさすが、軍師だけあって目を見張るものがあった。

「面白い。その本の閨房術、俺に通じるか、試してみるがいい」

曹操は口元をゆがませ、二人を挑発した。

「その余裕がどこまで続くか、楽しみです。殿」

荀ケは意地悪くいって、曹操の手首に唇を落とし、

赤く痕の残る傷に丁寧に舌を這わせた。


荀ケの舌が傷を舐めるたびに、そこから痛みが全神経に伝わった。


「っぅ・・・ぁ、や・・・。」

荀ケと荀攸の二人の攻めに、曹操の身体は痛みと悦の両方に支配された。

次第に痛みさえも、快楽のとりことなった。


「殿、かなり感じていらっしゃいますね。もっと、いい声で鳴いてもよろしいのですよ」


荀攸は指をさらに下腹部まで移動させた。ビクッと曹操の身体が軽く跳ねた。

曹操のそそり立つ象徴を十本の指を使って、

先から根元までその巧みな技でゆっくりとゆっくりとじらすように、曹操の快楽を引き出していく。


「殿、まだまだ、イかせませんよ」

荀攸はふたたび、紐を取り出して、曹操の少しずつ大きくなる象徴をギュッと縛り上げた。

「ひっ、あぁっ」

曹操の身体がのけぞり、先端から先走りが溢れ、荀攸の指と手を濡らした。


目じりに涙をためて、曹操はその苦しい快楽から逃れたい一身で、縛られている手首と足をばたつかせた。

だが、それでも一度、身体に染み込んだ快楽からは逃れることはできなかった。


苦しくても、どこかで快楽を求め、さらにもっと先の快楽まで行こうとする。

「かわいい顔です。その苦しそうな表情を見ていると、私、文若も感じてしまいます」

荀ケは曹操の目じりにたまる涙を唇で吸い尽くすと、形のいい曹操の唇を愛撫し始めた。

唇を重ね、舌をいれ、絡め、そして、唇さえも荒々しく、隅々まで愛撫する。

息が途切れ途切れになりながらも、曹操は二人になすがままにされていた。

時折、その愛しい唇から甘い艶のある声が吐き出される。


「さすがに、私も限界が近いようですね。おじ上はどうですか?」

荀攸も苦しそうに荀ケの方に顔を向けた。荀ケはまだ、平常心を保っているようで、あまり表情に変化がなかった。

「そろそろ、いい感じでしょうか・・・」

荀ケは笑みをこぼして、服を脱ぎ始めた。

荀攸は曹操の双丘を指で広げ、自分のそり立ったモノを何の合図もなく、一気に押し込んだ。


「ひあっ!」

思わず、痛みで曹操は声をあげた。

根元まで押し込んだ荀攸はそれをギリギリのところまで引き抜き、そして、浅いところで挿入を繰り返した。


「殿、限界を超えましょう。きっとそれ以上の快楽があるはずですから」

荀攸は曹操の熱を感じながら、次第に通りがよくなるたびに、曹操の声が艶のある甘い声に変わるのを感じていた。

そんな曹操を荀ケはその口に己のモノを含ませた。

口内の温かさと曹操の行き先の定まらない舌が荀ケを刺激した。


曹操の身体がブルリと震え、荀攸はせき止めていた紐を外した。

その瞬間、三人は一気に欲を解放した。


そのあとも、休みなく、曹操を二人で犯すように抱いた。

寝台の上にはグッタリとした曹操が横たわっていた。


「おじ上、結局、殿には勝てませんでしたね」

荀攸が苦笑いをこぼしながら、そうつぶやいた。

「殿も逃げずに向かってきましたからね。まあ、それが可愛いのですけど・・・」

荀ケも同じように笑みをこぼしていた。

「目覚めたときは怒られますね。これではきっと殿は腰がたたないでしょうに」

荀攸の言葉に二人は顔を見合わせ、ぷっとふきだした。

その言葉とおり、曹操は目覚めたとたん、痛くて痛くて、起き上がれないという事態に陥り、仕事もなにもできなかったという。

「あの二人には甘いな・・・」


曹操は寝台の上で横たわりながら、つぶやいていた。







おわり